1997年の夏、フジテレビの月9ドラマ「ビーチボーイズ」は、
月9ドラマとしては、初めて恋愛テーマではなく、誰もが通る
夏の甘くほろ苦い季節の少年のこころをテーマにしたものでした。
館山の布良にオープンセットを建てて、3ヶ月間ロケ隊が滞在して
ほとんど同時収録に近いスケジュールでロケが行われていました。
ぼくらの夏はまだ終わってはいない。
ぼくらの中では、まだあのドラマが完結してはいないのです。
あのドラマのつづきを書いたのは何年か前でした。
続 ビーチボーイズ 「春樹が潮音海岸にやってきた」
第1話
かれらの夏がまたやってくる。潮音海岸という磁場に引き寄せられて
ばらばらに散っていたあの夏の主役たちが、この海岸にいる。
それは、伝説の夏に終止符を打つために。
ここは潮音海岸の砂浜。
風に飛ぶ砂の向こうに潮音の波が寄せている。
「ザクっ」
スニーカーがその砂を踏みしめた。
スニーカーがその砂を踏みしめた。
春樹が潮音海岸にやってきたのだ。
※ 春樹は稲森いずみさん演じる春子の息子。
会社を継ぐ夫の立場で、離婚させられた春子だったが、
一人息子の幼い春樹と民宿ダイヤモンドヘッドで過ごす機会があった。
春樹は再婚した夫と新しい母とともに外国へ行ってしまう。
春子は、いつか春樹がこの民宿を思い出し、訪ねてくれると期待する。
詳細は発売されているDVDビーチボーイズ」を見てください。
しかし、ここにはもうダイヤモンドヘッドの建物はない。
海のほうに目を向けると、熟年の男がふたり、岩場で釣糸をたらしている。
春樹は尋ねた。
春樹「すいません、ここに民宿があったと聞いてきたんですが?」
蓑田・こうぞう「え?」
春樹「すいません、ここに民宿があったと聞いてきたんですが?」
蓑田・こうぞう「え?」
と、同時にふたりがふりむく。
タクシーの蓑田と郵便配達のコウゾウだ。
こうぞう「5年位前まではあったよ。ね、キャプテン。」
蓑田 「ああ、民宿ダイヤモンドヘッド・・、15年くらい前だった。
こうぞう「5年位前まではあったよ。ね、キャプテン。」
蓑田 「ああ、民宿ダイヤモンドヘッド・・、15年くらい前だった。
若いのが二人来てナァ、かっこよさでは負けてたけど、
ビーチバレーでは俺たちのほうが強かったよな!」
こうぞう「そうそう、キャプテンがレシーブしたのを
こうぞう「そうそう、キャプテンがレシーブしたのを
俺がパーンと決めてね!」
バシ!こうぞうの頭を平手で叩き、蓑田は言った。
蓑田「バカ!おまえがレシーブしたのを俺がかっこよく決めたんだよ!」
ふたりがじゃれるようにもめているのを見ていた青年は、忘れられていた。
春樹「あのう・・・、それでその民宿は?どうなったんですか?」
蓑田「ダイヤモンドヘッド? いい民宿だったよなあ。
ふたりがじゃれるようにもめているのを見ていた青年は、忘れられていた。
春樹「あのう・・・、それでその民宿は?どうなったんですか?」
蓑田「ダイヤモンドヘッド? いい民宿だったよなあ。
15年位前に経営者が海で行方不明になってさ、
そのあと何年か経営者の孫娘と知り合いの女性がやってたんだ。
でも5年前に孫の方は母親のところに戻って行ったなあ。」
こうぞう「そうそう、真琴ちゃんもこの民宿を壊すとき、
泣いててかわいそうだったね。想い出もたくさんあったからさあ」
蓑田「春子ちゃんも、俺らに店をまかせて、
この民宿を頑張ってきりもりしてたもんな。
ここやめる時もここを残さなっきゃいけないって、
大騒ぎだったよ。」
話していた蓑田とこうぞうが、斜め後ろの春樹を同時に振りかえった。
話していた蓑田とこうぞうが、斜め後ろの春樹を同時に振りかえった。
そして、ふたりは同時に言葉を発した。
「ところで、あんただれ???」
「ところで、あんただれ???」
第2話につづく