潮騒が聞こえる〈BEACHBOYS1997〉

たそがれ時を過ごす場所。Costa del Biento / Sionecafe

SIONECAFE

昭和の大学の面影

先日の「館山の祭り展」につづき、新たな生活のある東京の大学の切り絵です。

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CIMG0503昭和の頃、お茶の水駅から駿河台下に向かうと
右側に見えてくる明治大学の校舎でした。

今は高層ビル校舎に変わっています。






CIMG0499お茶の水聖橋口から池田坂を下ると、
左側に見えてきた中央大学駿河台校舎。









CIMG0505いまはなくなりましたが、御茶ノ水駅聖橋口の改札です。
駅横の立ち食いソバ屋さんの
トッピングのコロッケは
甘くて夢のようにおいしかった。






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池袋の立教大学ですね。
草のからまるチャペルに♪
学生時代という曲がよく似合う
あこがれの光景でした。





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青山学院大学ですね。実家の弓道場には毎年春合宿に弓道部が来てくれました。
ぼくがファンだった極真の城西支部の岩崎達也選手が青学でしたね。武道館に向かう道でお会いしたけど鍛えられた体つきでした。





CIMG0504三田の慶應義塾大学ですね。
昭和の頃はこんな感じの通学路でしたが、
今は都会のなかの建物になってますね。



大学生活を控えている若者たちに夢多き生活が

待っていますように。。。

昭和の水道橋駅

この切り絵は、昭和30~40年代の水道橋駅のお茶の水側です。
まだ後楽園球場を巨人の長嶋さんが大活躍していた時代です。
ガードをくぐってまっすぐ行くと神保町の交差点に向かう道。
正面の大きな建物は、東京歯科大学の血脇会館。
都電が走っていた時代です。

映画館では、植木等の無責任男シリーズや加山雄三の若大将シリーズが
ゴジラ映画とカップリングで館山銀映で上映されていた頃です。

                                                             by. sionecafe
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もう見られない光景

ぼくが長い間通っていた御茶ノ水駅聖橋口ですが、
駅が改修されて、今はこの姿は見られなくなりました。

そして、ニコライ堂前の池田坂。。。
この周辺のお店も建物もいまは変わってしまいました。
かつての居場所は姿が見られなくなってくるんですねえ。

下の画像の右の角の2階にあったDinDonや談話室滝沢、

駿台そば、サンロイヤル、茜ツボのジョッキージュース。



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3部作写真集

SIONECAFEの南房総写真集3部作が出来上がりました。
こうしてみると、飾っておくときれいですねえ。


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Seaside Blue Roses

とってもポップな写真集が出来ました。。。といっても売ってないんですけど。
20ページのブックですが、一部ですが、見てみて下さい。
海辺の青いバラ。。。

あるはずのない光景が、海辺にある奇跡を集めてみたかった。

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最終話 新たな旅立ち

再びロンドンへ

それから一週間、純子は凪の母と親子のように日常を送っていた。純子はこの時代に慣れようと積極的に何でもやってみた。それはこの時代に来るのが約束されていたように、不思議と見違えるようにこの時代に溶け込んでいった。純子の努力は、最初は凪と暮らしていくためだったが、やがてそれは自分がこの時代に生きているという喜びに変わっていった。自由、すべて制限がなく、女性だからといってあきらめる必要もない。そして、純子は自由な時代に才能を生かしていくことになる。

凪と石井は再び小料理 藤子にいた。

「戸籍がない場合、就籍届というものを出すことになる。子供の場合は親が出生届を出し忘れたとかの理由で親が出せるが、親がない場合は未成年でも本人が就籍許可の申立書を出すことで戸籍を取るという方法がある。客観的に見て日本人だということが証明できればいい」

「彼女の場合は、どうやって証明するんだ?」

「うん。幸い、じいさんが生きている。純子さんは石井家の人間だから、DNA鑑定してもらって石井家の家族というのを証明しようと思う」

「戸籍上は誰の子になるのかな」

「身元保証と身元引受はおれの両親になるので、赤ちゃんの頃生き別れたとか記憶喪失だったとか、記憶が戻って帰ってきたがそれまでのことは思い出せないとか、シナリオがいるかもしれないな。戸籍上はおれの妹になるのかな。ごちゃごちゃ言われたら、おれが最後まで、お前らの面倒は見る。」

「石井、いやお兄さん、ありがとう。よろしく頼む」

「ええ~、そうかあ。凪とは兄弟になるのかあ。それも不思議な縁だな」

「わが家にとっては、家族が増えるのはとってもうれしいことだよ」

「そうそう、ダメ押しでお前と彼女の婚姻届も続けて出しちゃえよ」

「そうだな」

「えっ? おまえはなんか帰って来てからは、見違えて頼もしくなったな。物怖じひとつしない、その度胸もうらやましいよ」

石井と凪は意見が一致して、思わずハイタッチをした。藤子さんがそれを聞いていてビールをついでくれた。

「凪くん、おめでとう」

「ありがとうございます」

「じゃあ、乾杯しよう」

3人の話は、夜が更けるまで尽きることがなかった。藤子さんもこの店で起きた奇跡のような話に感激してくれていた。

凪の耳に、どこからか曾祖父の声が聞こえた気がした。

「凪よ、よかったなあ」

「おじいちゃん、ありがとう」

凪には、あごひげのある怖い顔をしたあの老人との出会いの場面が思い出されていた。まさか、あの老人が自分の曾祖父だったなんてあのとき考えもしなかった。あの曾祖父がいなければ、凪はここへ戻って来れなかったのではないだろうか。そう考えると英国留学の時の地下鉄での祖母との遭遇があったことも否定ができない。凪が生きているのは一人の力ではないのかもしれない。この世の中で生きていた、たくさんの祖先や家族たちの存在に守られているに違いない。曾祖父は祖父に、祖父は父に、タスキをつなぐ駅伝をしているように思える。今度は父から凪にとタスキは引き継がれていくのだろう。

recipe01_dish_im01凪は大学卒業後、航空会社に就職して空港で働く夢をかなえることができた。それをお祝いして、水野涼からローストビーフが届いた。凪は涼に、事の成り行きをメールしたが、涼からの返信には「長い話になりそうだね。今度、ロンドンに店を出すことになったんだ。寝ずに聞いてあげるからロンドンにおいでよ」とあった。
そして、凪はこの春から英国のロンドン、ヒースロー国際空港で勤務することが決まった。ムーア家の人たちとまた会うことができる。


1321どんな環境にあっても、凪はひとりじゃないんだと感じることができる。飛行機の中でも、もしかすると隣の席にあの老人がまた座っているかもしれないと思うことがある。自
分はひとりじゃない。そう思うことができて、凪の旅はまだまだ続く。いまは隣には純子が寄り添っている。凪はひとりじゃないということを、いつも実感できる。その安心感は潮騒のように凪の体に充ちている。




   人生は人それぞれに与えられた旅のようだ

子供はいつか親から離れて旅に出る

それは隣町への小さな旅かもしれない

それは見知らぬ外国に

一人置かれる旅かもしれない
 

それは遠く離れて

二度と会えない旅になるかもしれない

それでも親子の絆はつながれていく

寄せては返す波のように続いていくもの

ぼくらはいつも その潮騒を聞いているんだ
                  Fin

26話 未来への帰還 3


兄妹の再会

夕方になって、凪と純子は小料理 藤子に向かった。暖簾をくぐると懐かしい空間が待っていた。藤子さんがなぎを見るなり声をかけてくれた。

「あら、凪くん行方不明って聞いてたけど、無事に帰って来れたのね。良かったわ」

「ご心配かけました」

「あら、凪くん、きれいなお嬢さんねえ、彼女?」

「はい」

純子は黙って笑顔を見せていた。そこへ、石井がやって来た。

「こんばんは、藤子さん」

「いらっしゃい」

「おお、凪、どうしてたんだ?心配したぞ。地震の後、消えてしまったんで探したぞ」

石井はカウンターの傍に来て、凪の隣の純子に気が付いた。

「あ、初めまして。凪の友人で石井と言います」

「え?石井さん? 私は石井純子です」

「ハハハハ、うちのじいさんの妹と同じ名前ですね♪」

と笑いながら、石井は純子の顔をまじまじと見て愕然とした。

「あれ?法事をやったばかりのおばに似ている!」

「石井、正直に言うよ。落ち着いて聞いてくれ。じつは、彼女はお前のじいさんの妹さんだ。似ているんじゃなくて、本人なんだ」

「ばか言え、おばさんは死んで法事もやったんだぞ」

「あの地震の後、僕はタイムスリップして昭和20年の館山にいたんだ。そのとき、二十代の石井のおじいさんが現れて城山でお世話になったんだよ。純子さんにも木村屋旅館でお世話になったんだ。この時代に帰れることになって、一緒に連れて来たんだ」

「凪、居なくなったと思ったら急に現れて夢の話か。あのとき頭でも打ったか?大丈夫か?確かにじいさんの妹は旅館に勤めていたと聞いているけど、純子って名前までお前よく知ってるな。でも、そんなことあるかよ。映画じゃあるまいし」

「石井、本当の話なんだ。僕は純子さんと結婚する約束をした。この時代でふたりでやっていくよ」

「え?ホントの話なのか? マジ?」

「マジ卍 !」

「純子さんは今おいくつですか?」

「十七歳です。でも不思議、兄の孫にあたる人が私より年上なんて」

「はあ・・・」

石井はこの夜、かなり酔って家路についた。

次の日、凪は純子を連れて石井の家を訪ねた。なぜなら、石井の祖父がまだ健在だったからだ。兄妹の再会を石井に頼まれていた。

「こんにちは」

「は~い」

石井の母が出てきた。

「あら、凪くん、どこにいたの? みんな心配していたのよ」

「ご心配かけてすいませんでした」

「あら、お友達?」

「はい、ぼくの婚約者です」

「まあ、それはおめでとう。あれ、誰かに似ているわね」

「始めまして、純子です」

「え?純子さん?」

凪と純子は奥の居間に通された。そういえば、石井の祖父と純子は父親が戦死したあと、館山に残り、兄妹ふたりで働いて生活した苦労があった。純子はその兄と、ここで会えるということで、緊張していた。そこへ石井に連れられて石井の90歳を過ぎた祖父が入ってきた。その姿を見て純子が急に涙を流していた。

「お・に・い・さん」

純子の顔を見て、石井の祖父は驚いた。そして泣き出してしまった。

お~お~、と大きな声が部屋に響いた。ふたりは抱き合って泣いた。

「純子、純子なのか・・・」

「はい、おにいさん」

「純子が終戦後に急にいなくなって、空襲に巻き込まれてしまったかと心配したよ。布良の伯父から純子を見かけたと聞いて、布良まで探しに行ったんだが行方は分からず、家族はお前の葬式を出したんだ。小舟で海へ出たのを見かけた人もいたので、海で死んだと思っとった」

「はい、この凪さんと一緒にこの時代に来ました」

「そうか、んんん、わしにはよう分からんが、会えてよかった。でもなんで若いままなんだ?」

それを見ていた石井の母も唖然としてこの再会を見守った。十七歳の伯母が目の前にいる。

「お兄さん、私は凪さんと一緒に、この時代を生きていきます」

「おお、そうか。あの辛い時代を経験して来たんだから、幸せになって欲しい。凪くん、妹を頼んだよ」

「はい、ぼくが純子さんを守っていきます」

「おお、ありがとう」

純子の美しい目から大粒の涙がこぼれていた。

「石井さん、あの時は城山でお世話になりました。行く場所がなくて本当に助かりました。職場も木村屋旅館の純子さんを紹介してもらって助かりました」

「んん?何のことかな?」

「あ、いえ、ありがとうございました。感謝してます」

「何だか分からんが、妹をよろしくな」

「はい」


CIMG8611帰り道、凪は石井に相談したいことがあると言って、海岸に行った。


「相談って何だい?」

「純子さんの戸籍なんだけど、どうしたらいいかなあ」

「ああ、そうだよな、タイムスリップしてきたから、この時代には戸籍がないな」

「ぼくはいずれ航空会社に就職して、イギリスに行きたいんだ。もちろん、純子さんを連れて行って、向こうに生活の拠点を置くつもりだ。石井は市役所にいるんだろ?戸籍のことちからになってくれよ」

「彼女は若いけど、石井家の人間だから、俺も調べてみるよ」

「よろしく頼むよ。僕は彼女のことが好きだ。一生守っていくつもりだ。何も考えずに彼女を連れてきちゃったけど、不幸にはしたくない」

「純子さんはお前を信じて来たんだろ? お前が連れてきたので、病気で若くして亡くなったという話は違うということが分かった。お前が連れて来ちゃったから、向こうでは死んだことになったんだろうなあ。これだけの美人だ、向こうにいたらどんな人生が待っていたのかと思うとな・・・」

「そうだな、敗戦から70年のジャンプは大きいな。その間の高度成長期や人類が月に行ったことも一気に飛び越えてきたんだもんな。そこを埋めるのは大変だな」

「彼女は、ぼくが一生をかけて愛するたった一人の女性だ」

「うんうん、お前の気持ちはわかっている。何があっても俺たちで守って行こう」

「石井には言ってなかったけど、ロンドンにいたころ不思議な夢を何回か見たんだけど、純子さんが夢に出てきたんだ」

「ええ?夢に出てきたのか」

「うん、そのときは彼女が誰かは知らなかったんだけどね。目が覚めても、やけにはっきり覚えている夢だったんだ。彼女のことも、その言葉も所作も、すべて消えずに覚えていたんだ。3回の夢の内容もすべて覚えているんだ」

「不思議な夢だったんだな」

「3回目の夢の時、純子さんは僕に『早く迎えに来て』って言ったんだよ」

「おいおい、マジ?」

「マジ卍卍 !」

「実際に逢った時、純子さんは嫌な男に迫られていて、座敷牢に入れられていたんだ」

「ええ?なんだってえ」

「それを天窓から救い出してね」

「天窓だってえ?」

「純子さんも一緒に行くって決心してくれたから、もう止まれなかった」

「それで、一緒に戻ってくるって決めたんだな」

「時空を超えるって言うリスクはあっても、もう置いていけなかったよ」

「そうか、そこに居たら彼女は不幸だったかもしれないんだな」

「それは分からないけど、彼女は行くって望んでくれた」

「うん、凪、叔母を連れてきてくれてありがとうな」

「こっちこそ、ありがとう。ほんとは石井に認めてもらいたかったんだ。石井に応援してもらえれば、ぼくらはうれしいんだ」

「留学から帰国して、藤子さんの所で石井が純子さんの写真を落としただろ」

「あ、あの時お前は何か不思議なこと言ってたよな。焼き増ししてくれとか」

「うん、驚いたよ。純子さんが、石井のおじいさんの妹だったなんて」

「もう死んでしまって、いないことを俺が話したよな」

「そう、じゃあ、会うこともできないし、迎えに行くなんてできないじゃんって、あの時思ったんだ」

「そうだよな、それこそ夢の話だな」

「あのときはがっかりしたんだ」

「でもさあ、お前はタイムスリップして彼女を連れてきてしまったんだなあ」

「人生って、不思議なことがたくさんあるんだと思い知らされたよ」

「ホントだよなあ。でも、不思議なことはお前の周りだけに起こっているみたいだけどな」

「あ、そうか」

「できれば俺も、赤山でお前と一緒にタイムスリップしたかったよ」

「もし、行ってたら何をしてた?」

「そうだなあ・・・何をしてたかなあ?」

「若い頃のおじいさんに会いたくない?」

「いいよ、いまだって話はできるんだし・・・」

「石井ととっても似ていたよ。ノートを出してメモする姿なんてそっくりだったよ」

「そりゃあね、似ているだろうよ。じいちゃんを見ていると、自分もこんな老人になるんだろうなと思うことがあるよ」

「遺伝子だけでは語れない共通点があるのが面白いよね。でも、こうして帰って来れるとは思わなかったんだ。あの時代で死ぬのかなあって思って不安だった」

「そうか、そうだよな。そんなところに突然投げ込まれたら、不安しかないなあ。もしかしたら、神様はお前を選んでタイムスリップさせたのかもしれないなあ」

「えっ?」

「だってさ、もしおれだったら間違いなく戻って来れなかったと思うよ」

「僕は曾祖父に助けられて戻って来られたけど、曾祖父が言っていたよ。曾祖父が祖父へ、祖父から父へ、父から僕へとずっとタスキがつながれている。そして、僕があるのは、そんな絆のもとに存在しているからなんだって。一人だと思っていても、目に見えない祖先たちにいつでも守られているんだと教えてくれた。きっと、石井も祖先たちに守られてタスキを渡すランナーになっているんだと思うよ」

「そうか。俺にもそんな背景があって、いまを生きているのかあ」




25話 未来への帰還 2

スマホを取り出した凪はすぐに連絡を取って、いつもの藤子で石井と会う約束をした。石井は凪からの連絡に驚いていた。

「凪、どこにいたんだ?地震の後で居なくなったから心配したぞ」

「話すと長いから、今夜藤子で話すよ。石井が驚くような話もあるからさ」

「えっ、なんだい?」

「まだ家にも帰っていないんだ。今夜な」

「ああ、でも無事でよかった。じゃあ今夜」

「うん、ありがとう」、

久しぶりの石井の声で、帰ってきたことを実感した。

石井と連絡を取った後、純子を連れて家路についた。父と母は驚くだろうことは予想がついた。港から見える城山の上の館山城を純子は不思議そうに見ていた。そして、館山航空隊基地から飛び立つヘリコプターの音に驚いては、その行方を目で追っていた。おそらく純子にとって、」ヘリコプターを見るのは初めてだったのだろう。2日前に街に張られていた鉄条網もなくなっていて、敗戦の名残りもない街なかを歩いていると、平凡な一日が貴重だと感じる。


 
家に着いた凪は、この数日間にあったことを正直にすべて話した。母親は信じなかったが、父親は真剣に凪の話に耳を傾けていた。何より一緒にいる純子の様子を見て、凪の話を信じるしかないと思い始めていた。

「あなたはお名前はなんていうの?」

「石井純子です」

「お誕生日は?」

「昭和3年2月5日です」

「昭和3年?」

「うちのじいさんと同じくらいか」

「父さん、母さん、ぼくは純子さんと結婚しようと思う。しばらくは家でお世話になるけど、どうかお願いします」

「お前が決めたことなんだな」

「はい」

「わかった。だが、一つだけ問題がある。純子さんにはこの時代には戸籍がない。結婚もそうだが、そこを何とかしないといけないな」

「あ、そうか。はい、考えてみます」

「しばらくは、親戚の娘が来ていることにしよう。母さんもそれでいいな」

「そうね、何よりも二人の幸せを優先しましょう」

「父さん、ありがとう。母さん、純子さんのことよろしくお願いします」

「お母様、よろしくお願いします」

純子は、涙を流していた。母はそんな純子を抱きしめてくれた。

「大丈夫よ、大丈夫・・」

「凪、おまえの話は本当だと思うが、よく帰って来れたなあ」

「父さん、僕は向こうで、ひい爺さんに助けられたんだ。英国から帰った僕に、時空のゆがみが起こることを知っていて、ひい爺さんはぼくの傍でずっと守ってくれていたんだ」

「そうか、私の祖父に当たる人だね。戦争で死んだと親から聞かされたが、どんな人だった?」

「あご髭の生えた男気を感じる人だったよ。おじいさんにも会ったけど、まだおばあさんと結婚前の若い青年だったよ。お水を一杯ごちそうになったんだ」

「そうか、私の父親が若い頃か。面白い体験をしたんだなあ。凪は私たちが想像もできない冒険をしてきたんだなあ。これからも純子さんと長い人生が待っているなんてうらやましいな」

1396947826_1519914「おじいちゃんは僕に言ってたよ。ひい爺さんはじいちゃんに、じいちゃんは父さんに、父さんは僕へと、駅伝のランナーのようにタスキをつないでいるんだって。だから、祖先から言われて僕を助けに来てくれたんだって。ぼくが帰れなかったら、父さんでタスキが途切れてしまうでしょ」

「へえ、なるほどなあ。ずっと家族はつながっているんだなあ」

「うん、ぼくはロンドンに行った時から、長い長い遠い旅に行ってきたような気がするよ。でも、それは短い時間だったんだよね」

「不思議な冒険だったんだな、じつにうらやましい」

父母が純子を暖かく迎えてくれたことに、凪は安堵した。

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