潮騒が聞こえる〈BEACHBOYS1997〉

たそがれ時を過ごす場所。Costa del Biento / Sionecafe    2022年、館山の夕日劇場を見においで

続 ビーチボーイズ(春樹編)

続 ビーチボーイズ 第1話

1997年の夏、フジテレビの月9ドラマ「ビーチボーイズ」は、
月9ドラマとしては、初めて恋愛テーマではなく、誰もが通る
夏の甘くほろ苦い季節の少年のこころをテーマにしたものでした。
館山の布良にオープンセットを建てて、3ヶ月間ロケ隊が滞在して
ほとんど同時収録に近いスケジュールでロケが行われていました。
 
ぼくらの夏はまだ終わってはいない。
ぼくらの中では、まだあのドラマが完結してはいないのです。
あのドラマのつづきを書いたのは何年か前でした。
 
 
 
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続 ビーチボーイズ 「春樹が潮音海岸にやってきた」
 
第1話
 
かれらの夏がまたやってくる。潮音海岸という磁場に引き寄せられて
ばらばらに散っていたあの夏の主役たちが、この海岸にいる。
それは、伝説の夏に終止符を打つために。
 
ここは潮音海岸の砂浜。
風に飛ぶ砂の向こうに潮音の波が寄せている。
「ザクっ」
スニーカーがその砂を踏みしめた。
春樹が潮音海岸にやってきたのだ。
  春樹は稲森いずみさん演じる春子の息子。
会社を継ぐ夫の立場で、離婚させられた春子だったが、
一人息子の幼い春樹と民宿ダイヤモンドヘッドで過ごす機会があった。
春樹は再婚した夫と新しい母とともに外国へ行ってしまう。
春子は、いつか春樹がこの民宿を思い出し、訪ねてくれると期待する。
詳細は発売されているDVDビーチボーイズ」を見てください。
 
しかし、ここにはもうダイヤモンドヘッドの建物はない。
海のほうに目を向けると、熟年の男がふたり、岩場で釣糸をたらしている。
春樹は尋ねた。
春樹「すいません、ここに民宿があったと聞いてきたんですが?」
蓑田・こうぞう「え?」
 
と、同時にふたりがふりむく。
タクシーの蓑田と郵便配達のコウゾウだ。

こうぞう「5年位前まではあったよ。ね、キャプテン。」
蓑田  「ああ、民宿ダイヤモンドヘッド・・、15年くらい前だった。
    若いのが二人来てナァ、かっこよさでは負けてたけど、
    ビーチバレーでは俺たちのほうが強かったよな!」
こうぞう「そうそう、キャプテンがレシーブしたのを
     俺がパーンと決めてね!」
バシ!こうぞうの頭を平手で叩き、蓑田は言った。
蓑田「バカ!おまえがレシーブしたのを俺がかっこよく決めたんだよ!」

ふたりがじゃれるようにもめているのを見ていた青年は、忘れられていた。
春樹「あのう・・・、それでその民宿は?どうなったんですか?」

蓑田「ダイヤモンドヘッド? いい民宿だったよなあ。
  15年位前に経営者が海で行方不明になってさ、
  そのあと何年か経営者の孫娘と知り合いの女性がやってたんだ。
  でも5年前に孫の方は母親のところに戻って行ったなあ。」
こうぞう「そうそう、真琴ちゃんもこの民宿を壊すとき、
   泣いててかわいそうだったね。想い出もたくさんあったからさあ」
蓑田「春子ちゃんも、俺らに店をまかせて、
   この民宿を頑張ってきりもりしてたもんな。
   ここやめる時もここを残さなっきゃいけないって、
   大騒ぎだったよ。」

話していた蓑田とこうぞうが、斜め後ろの春樹を同時に振りかえった。
そして、ふたりは同時に言葉を発した。

「ところで、あんただれ???」
 
     第2話につづく

続 ビーチボーイズ 第2話

第2話
 
のどかな九重駅のホーム。東京からの各駅停車がホームに入ってきた。
電車から降りてくる海都。降りる人はほとんどいない。
無人駅、誰もいない改札を抜けて駅前に出る。
駅舎をふりかえり、あのころの面影を探すが、
すっかり変わってしまった駅舎を不思議そうに見上げている。
駅前に蓑田タクシーを捜すがいない。口だけ微笑んで歩き出す海都。
あの日と同じバッグをかつぎ、サングラスをかけなおす。

駅から、歩き出す海都に「タイトルバック」がかぶる。
主題歌が流れ、オープニングとなる。
 
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 海都が歩いていると、道端に車が止まっている。
あの日、初めてここに来た時に蓑田タクシーから広海の押す
ルノーキャトルを見つけた場所だった。
海都が近付いたときだった。
きれいな女性が声をかけてきた。
 
女性A「あ、すいません。
   ガソリンが切れちゃって、一緒に押してくれませんか?」
海都 「まさかあ? 」
ポカンとあっけにとられていた海都だったが、
あの日のイメージを取り払うかのように、笑いながら首を大きく振った。
 
海都「いいですよ。でもスタンドまでですよ」
独り言で、夢のカリフォルニアなんて言われたら、
まんまジャンとつぶやく海都だった。

歩いていた海都が、白間津の広海カーブに着く。
あの日、広海と海都が別れた場所だ。
そこから、海に出る。
海都はあの日の広海のように、腕時計をはずし、
時計を海に向かって投げた。
海都の高価な時計が、小さな水しぶきとともに海の中に沈んでいった。
 
海都「『やっぱ、夏は海だね』か・・」
 
ひとりでニヤニヤしている海都だった。
海都の斜め後ろの民家から、白衣の男がでてきた。
 
祐介「おばあちゃん、じゃあまた来週入れ歯の調整にくるからね、どうも。」
民家の人「どうもありがとうございました。」
 
民家から送り出される男は祐介だった。
かつて真琴の同級生で、海都の家庭教師を受けたことのあるあの祐介だった。
 
振り向いた祐介の目に海都の姿が飛び込んできた。
 
祐介「え?か・い・とさん?」
駆け寄る祐介を不思議そうに見ている海都。
 
祐介「海都さ~ん!! 海都さんでしょ!」
海都「あれ?祐介か? どうしたんだ、そのかっこ?」
祐介「どうしたもこうしたもないですよ、海都さん。
   どこで何してたんですか?連絡もくれずに」
海都「ごめんごめん」
 
思わずこみ上げるものに泣き出す祐介。
祐介「本当にどうしてたんですか?逢いたかったですよ。」
海都「しっかし、祐介こそ、その白衣?どうしたの?」
祐介「はい・・?」

続 ビーチボーイズ 第3話

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※ 1997年のドラマのオンエア時に発売された小説本の
「ビーチボーイズ」には、その後のことが少し書かれていて、
祐介は歯科医師となっているということで、歯科医師として
登場させています。
 
祐介の開設する歯科医院の一室である。
海都のためにコーヒーをいれる祐介。
 
祐介「まあ、コーヒーでもどうぞ!」
海都「へえ、あの祐介がねえ。歯医者?へえ~、頑張ったんだねえ」
祐介「そうですよ。海都さんに家庭教師やってもらったし、バッチリ!」
海都「へえ、世の中っておもしろいねえ。」
 
祐介「それより海都さんですよ。どうしてたんですか?」
海都「ああ、おれ? おれはもう一度、会社へ戻ったんだ」
祐介「前の会社ですか?」
海都「そう、部長とさくらが俺の居場所を用意してくれててね。」
祐介「自分も、それがいちばん海都さんに合ってるなあと思っていました。
だから、あのとき、会社辞めてきたって聞いたときに
  『海都さんらしさ』ってよい上司や仲間に囲まれて活躍しているのが、
  らしさなんじゃないのかなって思ってました」
 
海都「へえ~、祐介はいまいくつ?」
祐介「はい、32歳です。」
海都「32かあ、あのころの俺たちよりも年上なんだあ。
   おとなになったね。」
 
祐介「海都さんに、そんなこと言われるなんて・・・」
海都「あいつはきっと、変わらないんだろうなあ?」
祐介「あいつ?あいつってあの人のことですか?」
 
海都と祐介が目を合わせて、同時にプッと吹いて笑い出してしまった。
なぜかあいつの話題になると笑いが止まらない。
ふたりの大笑いが祐介の歯科医院のなかに響いていた。
 
祐介「ところで海都さん、海都さんはなんでここにいるんですか?」
海都「うん、中東の方に長く出張しててさ、やっと日本に帰って来れたから。
   行ってみようかなって思ってさ、ダイヤモンドヘッドに。
   みんな、元気なの?」
祐介「海都さん、何も知らないんだ。もう民宿はあそこにはないんですよ。」
海都「えっ?じゃあ、春子ちゃんは?真琴ちゃんは?」
祐介の話す事情に、海都は聞き入り、祐介に質問をあびせた。
そんな一夜をふたりは過ごすのでした。

朝、潮音海岸に向かう海都が祐介の家で送られている。
海都 「すっかりお世話になっちゃったね。ああ・・そうだ。
    祐介は結婚してるの?」
祐介 「海都さんや広海さんにもあやまらなくちゃいけないんですけど。
    おれ、結果的に真琴ちゃんを守れなかったので・・」
海都 「祐介のせいじゃないって。あんまり気にするな。」
祐介 「もうひとつ、海都さんに報告があるんですけど・・」
海都 「なに?」
奥の扉を開けて、赤ちゃんを抱いた女性が出てくる。

海都 「裕子ちゃん?」
祐介が照れながら、こっちに来いと手招きをする。
祐介 「じつは、裕子と結婚しまして、赤ちゃんが。」
海都 「あ・あ・そうかあ。そうだったんだあ。
    おめでとう!祐介裕子!」
裕子 「あ、その言い方、気になるんですけど。売れない漫才師みたいで」
ハハハハ()
海都は赤ちゃんを見ながら、頭を掻き掻き照れくさそうに
二人を祝福した。

海都がスナック渚まえに歩いてくる。
スナック渚の建物はなく、売り地の看板が立っている。
白いベンチに腰掛けて、たばこを取り出す海都。
海都 「春子ちゃん、どこに行っちゃったんだろう?」
ベンチにすわる海都の後ろ側を春樹がすれちがっていく。
振り向いた春樹は海都の手にある煙草に気づく。

春樹 「火をつけましょうか?」
海都 「ああ、ありがとう。」
隣に座る春樹もたばこを吸う。(春子と同じセーラムライト)

海都 「観光ですか?」
春樹 「いえ、知り合いを訪ねてきました。あなたは?」
海都 「ええ、まあ同じような旅です。知り合いには逢えましたか?」
春樹 「いえ、ここにはいませんでした。でも、不思議なんです。
    ぼくは、初めてここに来たつもりなんですが、海岸に行くと
    なつかしいような、以前小さいときにここにいたような、
    そんな気がしました。」
海都 「へえ、きっとその知り合いの方がいい想い出を
    君に残しているのかもしれないですね。
    逢えるといいですね、その方に。」
春樹 「ありがとうございます。
    外国が長かったんで、ここにくるのも心配だったんですが、
    みんないいかたで、ここでもあなたのようないいかたに会えた」
海都 「ハハハ、そう思ってもらえればうれしいな。
    実はぼくも海外出張が長くて、久しぶりの日本なんですよ。」
春樹 「そうだったんですか。どちらに?」
海都 「ドバイです。中東のプラント事業でね。」
春樹 「ぼくも父の会社が中東の支社だったので、
    子供の頃から行ってました。」

海都はピンときて、われにかえったように青年に聞いた。
海都 「え?失礼ですけど、いまおいくつですか?」
春樹 「20歳です。」
海都 「名前は?」
春樹 「吉永春樹です。」
海都 「春樹? 春樹くん?」
不思議そうな顔の春樹の肩をつかんだ海都。
海都 「そうかあ、君が春樹くんか。そうかあ。」
 
 

続 ビーチボーイズ 第4話

第4話
 
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春樹の父と海都が以前会談したホテルのラウンジ。
窓越しに白浜の海が見えている。(ドラマでは「向こうのホテル」)

春樹 「どうしてぼくを知っているんですか?」
海都 「うん、それよりも、なぜ君はここに来たの?」
春樹 「ぼくには、大事に育ててくれた父母がいます。
    それで十分なんですけど、20歳を迎えた誕生日に、
    父が話してくれたんです。お前にはいまの母と、
    もうひとりの大事な母がいるって。
    その母が、ここの民宿にいるから20歳の大人として
    会ってこいと言ってくれたんです。最初はとまどったんですが、
    やっぱり会ってみたいと思って、ひとりできました。」
海都 「そう。お父さんがそう言ってくれましたか。
    ぼくも、ちょうどこの席で君のお父さんと
    話したことがあるんですよ。」

春樹 「え?父をご存知なんですか?」
海都 「ええ、君が5歳くらいのときにお父さんに連れられて、
    この潮音に来ました。そのときに、君には新しいお母さんがいて、
    だから春子ちゃん・・君の母親のことだけど・・春子ちゃんと君に
    親子のふれあいをここの民宿で過ごしてもらって、
    君を送ったんだ。」
春樹 「じゃあ、ぼくはやっぱり、ここに来たことがあるんですね。
    でも、なんでぼくにはもうひとりの母のことが
    思い出せないんだろう?」
海都 「きみのお母さんは、君がここに連れて来られたときに、
    きみのお父さんから、母親だときみに名乗るのも名乗らないのも
    任せると言われていたんだ。」
春樹 「それで、その人はぼくに母親だと名乗らなかったんですね。」

海都 「そう、春子ちゃんは母親だから、すぐにでも抱きしめて
    名乗りたかったと思うよ。
    でも、春子ちゃんは自分よりもきみの幸せを望んだんだ。
    きみがこれから、あたらしいお母さんと暮らしていくのに、
    自分が邪魔しちゃいけないと、名乗らなかったんだ。」
春樹は静かに海都の話を聞いている。

海都 「それから、きみがお父さんとフェリーで帰って行った時、
    きみのお母さんは展望台から君の乗ったフェリーにむかって
    泣いて叫んでいたよ。
    『お母さんは、お母さんは春樹のことを、ずっと思っているから』
    ってね。今でもあの光景ははっきり覚えているよ。」
春樹の頬に一筋の涙がこぼれ落ちた。
窓の外の海鳴りが聞こえてくるような静けさが、二人の周りを包んだ。

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海都 「春子ちゃんはお店をやってたんだけど、
    いつか春樹くんがここを思い出して
    きてくれるかもしれないからって、店を辞めて、
    海岸の民宿をやることになったんだ。
    春子ちゃんの頭にはいつも春樹君のことがあったと思うよ。
春樹 「母のことが、少し理解できたような気がします。
    海都さん、話してくれてありがとうございます。」
海都 「いやいや、お礼をいいたいのはこっちの方だよ。
    俺たちもね・・ああ民宿にいたもうひとりと真琴ちゃんっていう
    民宿の子もね、春子ちゃんがかわいそうで、
    なんで名乗らないのかってケンカまでして心配してたから。
    春樹くんに、春子ちゃんの気持ちがすこしでも伝わったことで、
    俺もちょっと肩の荷がおりた。」

春樹 「きのう、釣りしてた人に聞いたんですけど、
    水泳の得意なおっちょこちょいな人って言ってたけど、
    イメージがちがったなあ。」
海都 「え?え? ああ、それはもうひとりのやつ・・。
    ばかだけどさあ、人をひきつける魅力のあるやつだよ。」
   「・・ていうかさあ、釣りの人ってだれ?」

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続 ビーチボーイズ 第5話

第5話
 
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春樹は海都と分かれていったん館山湾の見えるホテルに戻った。
海都は久しぶりの潮音海岸に向かった。
浜に下りる坂の上で遠く海を眺めたあと、
一歩一歩踏みしめるように坂を下りてきた。

 
海都は、ダイヤモンドヘッドの跡地の前に立った。
バッグを置いてサングラスをはずして、跡地を見回している。
とんびの遠鳴き、同時にウィンドチャイムが聞こえた気がした。
 
 
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浜の方から声が聞こえたので海都が振り向くと
ふたりの男が砂を積む作業をしている。
近づいていく海都。

こうぞう 「そうじゃなかったでしょ、キャプテン」
蓑田   「こうだろう?使えないなあ」
こうぞう 「もっと水をかけなくちゃ」
蓑田   「そうじゃないって」

海都   「何をしてるんですか?」
という声に、二人が同時に振り向いた。
蓑田・こうぞう 「あんた誰??」
海都   「ひさしぶりだね。ふたりとも。(笑)」
蓑田・こうぞう 「あ!鈴木海都♪」

海都   「二人で何をしてるんですか?」
蓑田   「ほら、春子ちゃんの子供の春樹くんが、来たんだよ」
こうぞう 「いつかここに来たときにみんなで砂の船をつくったでしょ」
蓑田   「あした、またここに来たときに砂の船を作っとけばさあ」
こうぞう 「あのときのことを思い出してくれるんじゃないかと思って、
      ね!ね!キャプテン」
海都   「ああ、あのときの砂の船をつくってるんだ?」
蓑田・こうぞう 「うん♪」
海都   「ふたりとも、あいかわらずだね。
      よおし、俺も手伝おうかな。」

こうぞう 「鈴木さんはなんでここにいるの?」
海都   「俺は少し早い夏休み」
こうぞう 「なんだか、あのころの夏みたいだ、ね、キャプテン」
蓑田   「うん、そうだな」
こうぞう 「鈴木さん、さくらさんは?」
海都   「いまはロンドンにいます。」
こうぞう 「と、いうことはまだ」
海都   「いえ、結婚してますよ、さくらと。
      でも、ふたりともまだ仕事に生きてます。
      これも、あたらしい夫婦のあり方だと思うんですよ。」
蓑田   「おめでとう」
こうぞう 「おめでとう」
海都   「どうもありがとう」
蓑田とこうぞうは、手の砂をはらって、海都に握手をもとめた。
 

砂の船を3人はつくりつづける。
海都  「蓑田さん、春子ちゃんと真琴ちゃんはどこにいるの?」

蓑田  「そうそう、あれからしばらくは順調にいってたんだよ。
     民宿も。」
こうぞう「でも、7年前くらいに、とうとう来ちゃったんですよ」
海都  「来たって何が?」
こうぞう「民宿あらし・・」
海都  「えっ!」
こうぞう「やさしい顔して5人くらいで泊まって、
民宿のものを根こそぎもっていっちゃったんですよ。」
蓑田  「やっぱり、おんなふたりでの経営は難しいんだよ」
こうぞう「社長みたいな男がいないと。特にこんな田舎ではね。」
蓑田  「そのあと、真琴ちゃんのお母さんが物騒だといって、
     真琴ちゃんをむかえに来ちゃったんだよ。」
こうぞう「真琴ちゃんも、泣く泣くお母さんのいる東京に
行っちゃったしね。
蓑田  「春子さんは、最後までここを守るってがんばったんだよ。
     でも、そこに大きな台風が来て、おまけに近海での大きな地震が
 重なって、津波で民宿は半分もっていかれちゃったし・・
       おれたちは何もできなかったな。」
こうぞうが小さくうなづく。
海都は思考が渦を巻いて上空に舞い上がっていくように感じた。
海都  「それで、春子ちゃんは?」
蓑田  「しばらくはこの町にいたよ。
     毎日ベンチにすわって海を見ていたよ」
こうぞう「話しかけると、いつも春樹くんが来たときに
     民宿がないといけないって独り言のようにしゃべってました。」
海都  「春子ちゃん・・・」

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続 ビーチボーイズ 第6話

第6話

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(ドリアンは、1997年のロケで滞在していたロケ隊や出演者が
毎晩のように訪れたお店ですね。今回はイメージで
登場してもらいました。現在店はやっていません)
 
潮音の町の入口にあるドリアンという軽食屋の中
真琴  「久しぶりだね。美智恵さん」
美智恵 「1年ぶりだね。なに食べる?」
真琴  「ん~~、オムハヤシ
     たまごトロトロにしてね」

美智恵 「OK!真琴ちゃん、これ好きねえ」
真琴  「うん!
     でも、美智恵さんが潮音でお店出すとは思わなかったなあ」
美智恵 「今度はわたしが、毎年くる真琴ちゃんをおむかえするんだもんね。
     あのころとは反対よね」
 
ニュースの声「アラブの石油王の娘の命を救った日本人を、家族のようにしているという話を以前お伝えしましたが、そのアラブの石油王が石油高騰のおり、その日本人とともに来日しました。成田空港には政府関係者が出迎えています。」
美智恵 「へえ、アラブの石油王って、お金持ちなんでしょう」
真琴  「だよねえ。きっとその娘の命を救った人も大金持ちのセレブだよねえ」

テレビに民族衣装に身を包んだ一行が映し出される。
真琴  「あれえ?この人誰かに似ている」
美智恵 「どのひと?」
真琴  「これこれ、この人、ああ見えなくなっちゃった・・」

美智恵 「誰に似ていたのよ?」
真琴  「だれって? あいつ・・、」
美智恵 「あいつって?」
真琴  「ええ?だけど変なのかぶってたし、まさかあ?」
美智恵 「そうよねえ。そんなドラマみたいな話なんてないわよ」

真琴と美智恵は目を合わせて
美智恵・真琴 「ねええ」
テレビの画面には、アラブの衣装に身を包んだなぞの日本人の男が
映し出されていた。

潮音海岸の対岸のピンクのお屋敷。
海をながめていたこの館の主が砂をつんでいる男たちを見つける。
はずき 「じいや、双眼鏡をもってきて」
じいや 「はい、ただいま」
はずきが双眼鏡をのぞくと、3人が作りかけた砂の船が目に入る。
はずき 「あ!」
身支度を整えて海岸に飛び出すはずき。

はずき 「あのう、なにしてるんですか?」
海都  「はずきちゃん?ひさしぶりだねえ。」
こうぞう 「あ、はずきちゃん
     見た通り、砂の船をつくってんの」
はずき 「手伝いますね。」
海都  「はずきちゃん、体のほうはもう大丈夫なの?」
はずき 「はい」
海都  「春樹くんの砂の船。もう一回つくるんだ。」
はずき 「なんで、つくるんですか?」
海都  「春樹くんが春子ちゃんをたずねてここに来てるんだ」
はずき 「ええ、ほんとうですかあ?すごい」
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じいや 「ああああ、おじょうさま、そんなことをされては・・」
はずき 「大丈夫よ。じいやは先に帰っていていいわよ」
 
海都  「あの建物は、はずきチャンの家?」
はずき 「別荘です。何年かまえに建てました。」
海都  「へえ、お金もちなんだね。」
はずき 「いえ、私の最後のわがままなんです」
海都  「いろんな親子関係があるんだね。」

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(ここもイメージですので、実際はある会社の役員さんが
お住まいの民家です)

続 ビーチボーイズ 第7話

第7話 うれしい奇跡
 
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東京T国ホテルのスウィートルーム。アラブの石油王の家族の部屋。

石油王アリ 「日本もきれいなところじゃないか、きみの生まれた国だね」
アリの娘  「あ、あれが東京タワーなの?きれいな夜景ね」
謎の日本人 「うん、日本は海もきれいなんだよ」
石油王アリ 「一度見てみたいね。君がいつも話してくれる海を」
謎の日本人 「時間はあるんだから、行きましょうよ。」

石油王アリ 「ところで、わたしにおりいって願いがあるといっていたが、
  いったいなんだい?娘の命の恩人だ。
  たいていのことは聞いてやるよ」
謎の日本人 「ありがとう。では、お願いですが・・・」

なぞの日本人は石油王アリに自分の願いを話した。
カメラは部屋の扉の外を警護するSPの足元を映している。


ふたたび、ドリアンの店内。

真琴  「春子さんの店も暇だったけどさ、ここもけっこう暇だね」
美智恵 「わあ、いたいところをつかれたなあ、ハハハ」
真琴  「ごめんごめん。でもおいしかったよ、オムハヤシ。」
 
美智恵 「真琴ちゃん、きょう泊まっていくでしょ」
真琴  「おねがいしま~す。」
美智恵 「あしたは休みだし、ふたりで海岸でも散歩しようか?」
真琴   「うん、楽しみ~」
 
真琴の横にはテレビがニュースを伝えている。
ポッキーを食べながら、それを見ている真琴。
 
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そのころ、潮音の漁協事務所に無線が入っていた。
漁労長が無線を取った。
漁労長 「はい、はい、ええ!!ほんとうかい?」
事務員 「どうしたんですか?」
漁協の事務員、漁師たちがみんな無線の周りに集まった。

無線を切った漁労長は、涙を拭いて話し始めた。
漁労長 「みんな、十数年前に波乗りで行方不明になった
     民宿のおやじが生きてるらしい」
一同がどよめいた。

漁労長 「沖に浮いてたのを、メキシコ船に助けられて、
     乗せられてメキシコまで行ったそうだ。
     記憶失ってて、最近になって記憶が戻ったそうだ。
     あのおやじ、顔が日本人ばなれしてるからよお、
     そのまま現地で溶け込んで生活してたらしいや」
事務員 「でも、よかったですね。それでいつ帰ってくるんですか?」
漁労長 「あした、潮音の港に帰ってくるっていうんだよ」
漁師  「それはめででえなあ。あしたはみんなで飲むか?」

事務員 「ご家族への連絡は?」
漁労長 「民宿はなくなっちゃったしなあ、おんなんこは東京だろ?」
事務員 「では、娘さんのところに、連絡いれときましょう」
漁協の中はおまつりさわぎとなった。

ドリアンの2階の美智恵さんの住まい。
美智恵さんと真琴が眠りに付いている。
電話が鳴った。
飛び起きた美智恵が電話に出る。

美智恵 「はい、ドリアンですが?」
和泉慶子「夜遅くごめんなさい。和泉といいますが、
     真琴がお世話になっていませんしょうか?」
美智恵 「ああ、来てますよ」
慶子 「いつもすいません。」
美智恵「いいんですよ。家族も同然なんだから。」
慶子 「ありがとうございます。急用なんですが、真琴出られますか?」
美智恵「あ、はい。ちょっとおまちください。」
美智恵は、真琴ちゃん、真琴ちゃんと寝ている真琴の肩を叩いた。

真琴は目をこすりながら電話を取った。
真琴 「はい真琴です。あ、おかあさん、なに?」
慶子 「大変よ、いま漁協から電話をもらったの。
    おどろかないでね。」
真琴 「なに? なによ? 早く言って。」
慶子 「あのね、勝おじいちゃんが生きてたの
真琴 「またあ、お母さん、きょうはエイプリルフールじゃないんだから。
    いたずらもいいかげんにしてよね。」
慶子 「こんなことで、うそなんかつかないわよ。
    おじいちゃんが、外国で生きていたの!」

真琴 「ま・まじ~!ほんとうなの?」
慶子 「うん、わたしだってまだ信じられないんだから。」
真琴は受話器をにぎりながら、肩をふるわせて泣いている。
それを見て、美智恵は心配そうに見守っている。
真琴 「お母さん、電話ありがとう」

美智恵「どうしたの?真琴ちゃん」
真琴 「おじいちゃんが、おじいちゃんが生きてたの
    それで、あした潮音の漁港に帰ってくるんだって。

    お母さんもあしたここへくるんだって・・」
美智恵「ええ~、あの勝さんが生きてたの~?
    それは奇跡よ。真琴ちゃん、よかったねえ!!!」
真琴 「うん

ここドリアンでもお祭りが来たような歓喜の声があがった。
この夜おそく、町中に和泉勝の生還は話題となってかけぬけた。
そして祐介からの電話が、海都の泊まっているホテルにもかかっていた。

祐介 「海都さん、勝さんが生きていました!奇跡です。
    あした、漁港に帰ってくるそうです。」
海都 「ほんと?ほんとにほんと?」
海都は手を目に当てて、うれしさをかみしめている。
海都 「社長が・・あの社長が生きている。よかったあ。」
連絡を受けたあと、みんなうれしさで眠れない夜となった。
 
その夜、潮音海岸からは水平線ぎりぎりに赤く輝く星が見えた。
カノーブスと呼ばれる南半球の星だ。この浜ではみられるという。

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続 ビーチボーイズ 第8話

第8話 「社長のサプライズ」
 
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短い夜は明けてきた。きょうは勝が、この潮音に帰ってくる日だ。
港では、朝早くから漁師や町の人たちが、歓迎の用意を始めていた。

漁師A 「漁労長!美崎中学校の吹奏楽部は10時ごろ来ることに
     なってます」
漁労長 「おう」

漁師B 「テレビのひとたちがカメラを設置したいそうです。」
漁労長 「おう、やってくれ」

漁師C 「花屋に花束頼んできました」
漁労長 「おう」
漁港はたいへんなさわぎになってきました。
 
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ドリアンの店の玄関に慶子の車が着く。
真琴  「おかあさん、やっぱり、ほんとうなんだね。ウフフ」
慶子  「うそなんかつかないってば。うれしそうだね真琴。」
真琴  「そりゃあそうだよ」

慶子  「美智恵さん、真琴がいつもお世話様です」
美智恵 「ううん、ちっともお世話なんかしてないわよ。
     来てくれると、わたしもうれしいもん。」

真琴  「おじいちゃん、変わってるかなあ?」
慶子  「そうね。15年だもんね。もっとおじいちゃんになってるかも」
ハハハハ、と笑いが絶えない。

美智恵 「さあ、そろそろでかけようか?」
慶子  「ええ」


漁港におりてくると、なにやらお祭り騒ぎだ。
テレビのレポーターがカメリハしたり、
美崎中学校の吹奏部が音を合わせている。
真琴  「わあ、ディズニーランドみたいだなあ」

祐介  「真琴!」
真琴  「あ、祐介じゃん、ひさしぶり!」

祐介と真琴が話しているうしろから、煙草を買ってきた海都がくる。
海都  「真琴ちゃん、ひさしぶりだね。元気だった?」
真琴  「あっ!海都さん。」
真琴の止まった時間がふたたび動き出したような瞬間だった。

真琴  「でも、わたしのビーチボーイズ。
     ひとりじゃボーイズにならないじゃん」
     ひとりごとのようにつぶやく真琴だった。

海都  「よかったね。」
真琴  「うん♪」

美智恵 「おう、いい男。もうひとりはどうした?」
海都  「あいつですか?わかりません。」

慶子が小さく会釈した。
海都  「あ、どうも。その節はおせわになりました」

美智恵 「ところで海都、さくらさんは元気?
     あ、聞いちゃいけなかった?」
海都  「元気です! さくらとは結婚してますから」
美智恵 「あ~良かったぁ、言っちゃってからドキッとしたよォ」


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真琴が海をみてつぶやいた。
真琴  「あっ」

堤防を回って、勝を乗せた船が入ってきた。吹奏楽部が音楽を奏でる。
船が岸壁につけられた。

船内から、照れくさそうに和泉勝が出てくる。いつになく派手な服装だ。
(ア~フォエバー♪ひさしぶりのコーラスバージョンのBGM)

真琴  「おじいちゃん!」
勝   「おう、真琴か?」

慶子  「おとうさん!」
勝   「慶子」

海都  「おかえりなさい、社長」
勝   「おう、サラリーマン。お前まだここにいたのか?」
海都  「まあ、半分はあたってます。」
なみだ涙の再会劇だったのだが、勝のあとから、
青い目の女性と5歳くらいの男の子が船を下りてきた。

勝   「ああ、紹介する。真琴、お前のあたらしいおばあちゃんとおじさん
     だ。」
真琴  「ええ?ということは、おじいちゃんのあたらしい奥さんと子供?」

勝   「んん~、そういうことになるな。」
海都  「社長、あいつがいたら、『あのオヤジ・・』っていわれますよ」
勝   「うん、うん、まあ、そういうことだ。よろしくたのむ」

めまいがしてふらつく慶子の肩を美智恵が支えた。
美智恵 「あらら、慶子さん、大丈夫?」
 
 
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ビリー工作キット昭和シリーズ
ぼくらの夏は終わらない 1997年夏の月9ドラマ「ビーチボーイズ」に酔いしれる。館山市布良でロケ。
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